はたらく脳内
人間の体の中には、約7兆もの細胞たちが、今日も忙しく働いています。ここは、そんな細胞たちの、知られざる世界......
青「よう赤血球」
赤「赤血球ちゃうわ!なんやこの前置き、体の中ってのはあってるかもしれんけど、別に私ら細胞ちゃうやろ!」
黄「そうだよー、赤っちに働き者の赤血球なんか無理だもん。きっと「働かない細胞」の方がふさわしいよ」
赤「なんやて、そんならお前は黄血球にでもなってフランクス動かしたりしてリア充の霊圧に潰されればええんや」
黄「え、赤っち何言ってるの、意味わかんないんだけど」
緑「でもさ、もしかしたらわたし達、細胞なんじゃないかな?脳内の、なんていうんだっけ?」
青「大脳皮質細胞?」
緑「そうそれ!」
黒「....灰色」
青「え?」
黒「...世界的に有名なかの名探偵の言葉。『我が灰色の脳細胞で、必ずや事件を解決して見せましょう』ってのがあってね...」
青「じゃあ脳細胞って灰色なの?」
黒「わかんない....けど多分健康体なら灰色なんだと思う。」
赤「ってことは...うちの支配人の脳内がこんなに色とりどりっちゅーことは....」
黄「脳内お花畑、ってことだね!」
「「「「 なるほど!!!! 」」」」
緑「じゃあさ、もし私たち細胞じゃないんだとしたら、それなら一体何者なんだろうね」
赤「せやなぁ、精霊っつーんもなんか違うしなぁ」
黒「...英霊?」
青「私たち過去に何もすごいことしてないじゃん、なんの能力もないし」
黄「人格、じゃない?ほらさ、二重人格とか、多重人格者とか、そういうのあるじゃん。実はオーナーもその一種でさ、つまりこれってさ、『人格者会議』なんじゃない?」
赤「人格者っつーとなんか違う意味に聞こえるけどな」
青「ってことは私たちにも身体の支配権があるってこと?」
黒「そう....つまり私たちは支配人(オーナー)になれる可能性を持った候補生」
黄「つまり...アイツ(支配人)が死ねば....」
(((((この身体はわたしのもの.....!!)))))
赤「あーこうもしてられへんわ。部屋戻って槍の手入れして来るわー」
黒「....闇に染まれし呪われた因果よ、我が御名のもとに、全てを捧げよ....」
青「おい、アイツら殺る気満々なんだが....殺し合いゲーム的な雰囲気なのだが....」
黄「おいお前ら、久しぶりだね(ダミ声)」
青「ドラえもんとちびまる子ちゃんの中間みたいな声が聞こえる...これは本当に殺し合いが....?」
緑「でもさ....思ったんだけどさ、支配人の身体って性別的には男なんだよね。なんで女の子しかここにはいないんだろう...」
赤「たしかにせやなぁ」
黄「そういう趣味なんじゃない?」
黒「いやぁ...オーナーに男の娘要素を見出すのは流石に無理があるよ...」
青「じゃあわたし達は、人格ってわけじゃないってこと?だったらなんなんだろうね?」
緑「イデア界の住民?」
黄「その設定...まだ信じてるやついたんだね...」
赤「いや、あながち間違いやないんやないか?」
青「どういうこと?」
赤「例えばこの文章をな、読んでる奴が(きっと)おるわけやんか。そしてそいつの頭の中には、文章から読み取られた少し変わった私たちがいるわけやんか。それってまるで私たちが分裂してこの文章を媒介として移っていくっては考えられへん?」
黄「つまりー、まるでウイルスみたいって話?」
赤「そう、そういうことや。例えばウイルスっつってもインフルエンザみたいな生物的なやつだけでなく、コンピューターウイルスとか電子的な実体のないものもあるやんか。そういうものが実は人体の脳にもあって、私たちはそれなんやないかって説や。意外とそういうのってありふれてると思うで。」
黒「たしかに...一種の宗教とか、あれ集団感染者じゃないのかって感じするもんね...」
赤「せやせや。そんでもってそういうウイルスって日本だと基本的に“空気感染”なんやで」
緑「空気感染って?」
赤「日本には、ノリとか雰囲気とか、そういうもんが蔓延ってるやろ。高温多湿だから、空気は色々な菌の温床になりやすいんや」
黄「...修学旅行の夜ウイルスとか?」
赤「...あのなんでも言えるなんでも出来る雰囲気の奴やな。むしろシラフよりも正気で無くなる...。災厄を振りまく夜ランキングNo.2やわ」
黄「No.2ってことは、No.1はなんなの?」
赤「ワ○プルギスの夜」
黄「あぁ....」
青「試験前日の夜、とかもなんかすごい急に根拠のない自信が出てきたり、おかしな行動とかしがちだよね」
赤「急に身の回りの掃除とかしてたり、配信された漫画とかチャンネル動画とか全部視聴済みになっとったり、なぜかソシャゲのログイン毎日してたりなんかするともう手遅れやからな。全部オーナーがやっとったことやけど。」
青「だから50ギガ全部使い切るんだよ...テストも普通に死んでるし....」
黒「...孤軍奮闘のウィルとかね」
赤「『お前ら、いいから先に行け!後で必ず追いつくからよ!!.....いいか、お前ら全員俺が相手してやるよ。なぁに、安心しろ。ここが俺とお前らの墓だ。最高の花火、散らしてやるぜ!』とか言い出し始めるのはたしかに末期やね。雰囲気に酔いしれすぎとる。」
緑「...家賃相当のビル?」
赤「ああ、エレベーター壊れてるんですか。え、あトイレは共用。非常階段は錆びてて立ち入り禁止....。あ、家賃2万!?な、なるほど...」
青「うーん...マーチン=ルーサー=キングのミス」
赤「ええっと....Imagine, all the people...あっミスったこれビートルズの方やんけ...なんやったっけいつも俺がよく言っとるやつ...えっと....せや、I have a dreamやんけ!......てか途中から全然関係なくなっとるやんけ!てか最後ちょっと無理やりやあらへん?」
青「そんなに簡単に思いつかないもん」
赤「話戻すで、つまりな、私らはそういった類のウイルスなんや。せやからこの文章読んでる人はもう感染して、脳内に私らが見えてるはずだし、そもそも私らも、そうやって文章とかを媒介して他から移り住んできたのかもしれんし」
緑「だからかぁ。どうりでここのみんな、オーナーさんがいつも見てる、画面の中の人たちに似てるわけだ。」
赤「せやからこれを見てる人の頭の中には、その人独自の記憶とかに合わせた私たちがまたいるわけで、そうやって感染してく中でウイルスは変異を繰り返して強くなってくねんな。」
黄「まぁ私たちの感染力とかほんとたかが知れてるけどね。」
赤「まぁそこはどうでもええねん。ところで、私たちみたいな存在のこと、日本語でどういうか知ってる?」
赤「朱に交われば赤くなる、って言うんやで」
黄「それって渾身のオチが決まらなかった赤っちの顔のことー?」